メニュー

婦人科におけるアンチエイジング

[2009.04.23]

「アンチエイジング」というと、皆さん何を思い浮かべますでしょうか?

一般的には、「美容とか、見た目のきれいさを保つための、お金持ちがお金と暇をかけて自費で受ける医療」みたいなイメージがまだまだ強いかもしれません。しかし、日本語に訳すと「抗加齢医学」という言葉になり、検査だけでも、血管年齢・骨年齢・免疫系の検査など多岐に渡っており、いわゆるメタボ対策も含むような広い意味の予防医学、というとらえ方が出来ます。けっして、「どんだけ~」って言っているような人達だけが受ける、エステのような美容医療だけではないのです。

いわゆる美容的なアプローチは、やはり専門の皮膚科医や形成外科医におまかせするとして、婦人科でできるアンチエイジング医療とは、どういうものでしょうか?やはり、第一に挙げられるのはホルモン補充療法でしょうか。女性の場合、男性のゆるやかな精巣機能の低下と違って、閉経を境に一気にホルモンが減少してしまいますので、そこが大きなターニングポイントになることは間違いありません。女性ホルモンは、皮膚・骨・血管・コレステロールの代謝・脳の働きなど、全身の臓器に働きかけており、単純に生理が来る来ないというような問題だけではなく、全身的にアンチエイジングを心掛ける女性にとっては、大変重要なものなのです。全身がほぼホルモンに支配されている、と言っても過言ではありません。一過性の更年期症状の、「のぼせ」や「ほてり」といったもの以外に、閉経を境に高血圧や動脈硬化が進行して薬を始めたという女性も多くいらっしゃいます。しかし、日本でのホルモン補充療法の普及率の低さは先進国一と言われており、もっとみなさんがその恩恵を受けられるよう啓蒙活動をするのが婦人科医の役割だと言われています。

さて、ホルモン補充療法で一番心配なのはやはり癌(がん)、それも乳がんでしょう。これについて、最終結論は出ていませんが、厚生労働省の調査などから「日本人では、5年以内のホルモン使用では、まず乳がんのリスクは上がらないと考えていいだろう」という一応の見解が出ています。更年期障害の症状であれば、まず5年以内でおさまってくることがほとんどですから、症状がある場合はためらわずにホルモン使用を始めてみればいいと思います。「それより長く、予防医学的にボケ防止・骨粗鬆症予防で飲み続けたい」という方は、途中で弱めのエストリオール製剤(これは乳がんのリスクを上げないだろうとされています)にする、とかの工夫が考えられます。最新の文献では、エストロゲンでも、貼る薬や塗る薬は血栓の発症率が飲むものより低く、乳がんの発症率に関しては一緒に使う黄体ホルモンの種類でプロゲステロンやデュファストンというものが、よりリスクが低いという報告もあり、それらを参考に薬を選んでいけば良いと思います。

では、婦人科のアンチエイジングは閉経過ぎた人だけのものか?というと、そんなことはありません。閉経する前からでも、ホルモンバランスが悪く、排卵がおきにくい場合には、ピルを飲むことで毎月規則的に月経を起こすことができ、子宮体(内膜)癌の予防、卵巣がんの予防にもなる、と言われています。また、ピルには黄体ホルモンを抑制し、ニキビなどを抑える美肌効果も期待できます。最近では、一般的な女性ホルモン測定以外にも、閉経前に卵巣年齢を予測するための、抗ミュラー管ホルモン(AMH)というのも測定できるようになっており、これによって、低用量ピルから本格的ホルモン補充療法への移行を考える参考にもなるかもしれません。

女性ホルモン以外のその他のホルモンでは、副腎で作られるDHEAや、不眠症との関連があるとされ、睡眠薬としての使用が可能なメラトニンといったホルモンが、サプリメントとして使用可能で、ある程度の効果が期待できるようです。もちろんホルモン以外でも、プラセンタ・イソフラボン・リグナン・セサミンなどのサプリメントや、老化を腎の衰え・腎虚として捉える漢方療法など、内側から働きかけるアンチエイジングのために婦人科医ができることは、たくさんあります。

生まれた時から老化は始まっており、食事や運動などの生活習慣を含めた総合的アプローチで、老後の充実した生活までを支えられるような、広い視野、長い目でのサポートができるような婦人科医になるには、まだまだいろんな勉強が必要そうです。新しいことを学ぶのは、私の脳のアンチエイジングにもなりそうですが。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME