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人工授精について

[2009.05.22]

「人工授精と体外受精ってどう違うんだろう?」と、不妊検査を始めたばかりの方から質問を受けることがあります。

文字の違い「授精」と「受精」が示すように、人工授精は人工的に精子を子宮内に注入します。ただ、受精するかどうか、したかどうか、については卵管の中で起こることなので一切わかりません。卵管が正常に働いているという前提がある状態で、黄体ホルモンを補充しつつ、祈りながら待つばかりです。

一方、体外受精は試験管(皿のようなものですが)の中で精子と卵子を混ぜ合わせ、受精が自然に起こるのを待って確認まで出来ます。そして、「良い受精卵として順調に発育していくか」まで観察することができます。最近は胚盤胞移植といって、かなり育った状態になってから子宮内に戻すことが多いようです。自然に受精する能力がない場合には顕微授精といって、精子を卵子の中に注入する方法を行うことがあります。これも精子を注入するので「授精」という文字が使われます。

当院で行えるのは人工授精までですが、人工授精を行う目安はなんでしょうか?

  • 精子の数が少ない、運動率が悪いなどの精子に問題がある場合。
  • 頸管粘液が少ない、フーナーテストが悪い、などの精子と粘液の相性に問題がある場合。
  • 原因不明の場合。※検査を行った範囲で

しかし、最近の報告では、「フーナーテストはあまり意味がない」とか、「人工授精に成功した人の中で、半数近くがフーナーテストの結果には異常がなかった」という報告もあり、原因ははっきりしないけどなかなかうまくいかない、という方は、人工授精にトライしてみる価値はありそうです。しかも、今まで当院では、5,6回を目安にしていましたが、「人工授精が成功する方は8割が3回までのうちにできる」という報告もあり、「3回目まで」と限定して、それでだめなら、体外受精や腹腔鏡にすすむ、という前提での挑戦は意味があるかもしれません。

卵胞が1個の場合は、統計的に1周期あたり6.7%くらいの妊娠率ですが、飲む排卵誘発剤や注射の排卵誘発剤などで、2,3個の卵胞を育てると、倍数的に妊娠率は上がり、だいたい17~18%くらいの数値になると言われており、この方法が原因不明不妊に対する治療法の中では、体外受精を除いて一番妊娠率が高い、と言われています。

私が研修医の頃よりずっと前からある(何十年も前から)、人工授精という方法は、もっと見直されるべき、古くて新しい、温故知新の治療法と言えるかもしれません。

なお、人工授精の対応時間は、朝の外来診療開始前(7:30から8:00頃)と、昼休み(12:30から13:30頃)と、外来終了後(19:30以降)としており、件数の増加によって時間が遅くなったり早朝になったりとご迷惑をかけるかもしれませんが、ご了承ください。精子の取り違え予防策として、2件同時には行いませんので、どうしてもそうならざるを得ません。そのため、予約のない初診の方の受け付け時間は19時まで、という制限も開始させていただいております。

「痛いのか?」という質問もよく受けますが、子宮に精子を注入するカテーテルには、細いものやコシの強いものなどいろんな種類があり、各種取りそろえてその方に合うものを用いますので、それほど痛みはないと思います。

実際に精子を持参していただいてから、濃縮したり良い精子だけを選別したり、という操作に30分から1時間かかりますので、そのまま待合室でお待ちいただくか、マックや回転ずしなどで1時間ほど時間をつぶして来ていただいても結構です。精子が大丈夫かどうかと気を揉みながらでは、ご主人の方は食事もリラックスしては出来ないかもしれませんが・・・。

なお、昨年1年間の治療統計の集計が遅れておりご迷惑をかけますが、なるべく早めに出すよう頑張りますので、もうしばらくお待ちください。

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