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流産について

[2009.09.17]

不妊治療をしていて必ずぶち当たる一つの壁が流産です。

妊娠とわかって、やっと願いがかなったと思ったら流産、という場合、やはりショックは大きいもので、しばらく治療を再開できなくなる方もたくさんいらっしゃいます。流産は、どのくらいの確率でおこるものなのでしょうか?

まず、受精卵が実際にどのくらいの確率で妊娠まで至るかというと、20代の方で卵管だけが問題という方の体外受精でも、妊娠率が40%超くらいなのを見てもわかる通り、せいぜい50%程度です。受精しても半分は妊娠まで至らないのです。そして、その妊娠した方の6割、すなわち受精卵の30%は妊娠とわかるかどうかまでのごく早期に、流産 (化学的流産、化学流産)となります。受精卵のうち20%が普通に判定できる妊娠となるのです。

しかしその中の2割前後は流産になります。流産の70%は胎児に染色体異常があるために起こると言われており、それだけいい卵、というのは少ないということなのでしょう。この世に生まれてくるというだけで、すごい偶然のことなのだなあと痛感します。

一度流産したということは、逆に考えると妊娠はできた、ということで、ポジティブに考えていただいた方が良いのです。しかし、そこにも落とし穴があります。一度流産した方は、同じ治療法にこだわりやすく、そこからのステップアップが出来にくい傾向もあるのです。人工授精でできたのだから、その同じ方法で粘りたい、体外受精まですすむのはなるべく避けたい、その気持ちは人情としては大変よくわかります。しかし、流産は経験しているけど出産まではいっていない、という不妊の方は本当にいっぱいいらっしゃいます。

先ほども書いたようにすごい大変な確率を生き抜いて正常妊娠にいたり出産に至る、ということは、その時々のコンディションで全く違うので、同じ方法に固執することなく、流産後も規定の回数同じ治療法でやってだめな場合は、どんどんステップアップする勇気をもってほしいと思います。流産した時点から比べると時間は経っていて、卵巣の老化は刻一刻と進んでいるのです。まったく同じ条件というのはありえません。

当院では治療後の妊娠の方に、心拍が見えて安定するまで黄体ホルモンの注射を行うことがよくあります。しかし、実際に黄体機能不全による流産というのは10%あるかないかと言われており、その効果についてはわかりません。しなくても育った、という可能性は十分あります。

しかし、流産がわかってからホルモンを補っても遅いし、黄体機能不全による流産は結局あとから思えばそうかも、という推測でしかつかない診断なのです。ですので、ご希望でない方には行いませんが、体外受精などでは、ほとんど毎日に近いくらい注射を行うことを考えると、しばらくの間注射をして後悔がないようになるのであれば、その方がいいと思います。

もし万が一流産ということになっても、最終的なゴールを見失わずがんばってほしいと思っています。

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