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医療経済と医療を取り巻く環境

[2010.03.29]

医療保険の価格改正が4月1日から行われ、病院が手厚くされ勤務医不足対策のために報酬をアップした、とされています。われわれ開業医には再診料の引き下げとなる改正なのですが、はたして、病院への報酬アップが即勤務医の病院離れをふせぐ対策につながるかというとはなはだ疑問です。

まず、女性医師の働きやすい環境を整えるために、託児施設などを充実させるなどのハード面にお金をかける病院が出てくれば一番いいのでしょうが、そういう面に気を配る施設なら、すでにある程度のことはしていそうな気がします。また、直接的なドクターフィーみたいな手当てや、産科当直で言えば分娩1件いくらといった具合いに歩合給がつくといったことも給料の面では大事ですが、そんなにフィードバックされるとは思えません。また、人はパンのみによって生きるにあらず、という部分もありますので、給料が上がったらみんな残る、という訳でもないと思います。

結局のところ、自分が開業した経緯を考えてみても思うのですが、勤務医をやめて開業したいという人の中には、開業医がラクだという幻想がある、のが一つ大きな原因でしょう。それぞれの立場にならないとわからないのですが、全然楽ではありません。勤務医時代の私の認識は間違っていました。ですので開業医たたき、みたいなのは心外です。

もうひとつは、どんな業種でもあるであろう独立願望、です。起業願望、といってもいいのでしょうか。これは一国一城のあるじになる、というロマンみたいなもので、人それぞれの性格ですから、みんながみんなずっと勤務医でやっていく、ということにならないのは当然でしょう。私も、自分でいろんなことを決めて採り入れて、いろいろやってみる、という、この起業的な部分に関しては大変やりがいを感じております。ですから、少しでもそういう願望が芽生えた人はいくら給料が上がってもだめでしょうし、最終的なところは人それぞれの価値観ということに帰着しそうです。

先日も私の同級生が医学部教授に選出されたというニュースが舞い込んできました。医師100人の村があれば、10人から20人くらいが大学勤務医で最終的に教授までなるのは一人か二人。残りの40人は開業医、あと半分の40人は勤務医、まれに一人くらいが医師以外の仕事をしている、というふうに、人の生き方的に考えてもそうなるのではないかと思います。でも、そうした個人個人の生き方を肯定できないほど勤務医不足が深刻なら、やはり計画配置しかないのでしょうか?

アメリカでは、最近まで医療を受けられない人もいたのに、一律に高度医療が受けられる幸せな日本では医療費がかかって当然、働く人たちが燃え尽きずに長く働ける環境を整備するのにもお金がかかる、しかし、財政難の時代で財源も限られるとなると、本当に賢明な選択は何なのでしょう?優秀な政治家の出現が待たれますね。

しかし、国民皆保険制度や子供手当など医療や福祉に関することは、発想的には社会主義的共産主義的な部分もあるのですから、医師の計画配置という個人の自由を規制する動きも、医師が社会資源であるという見地からは正しいかも知れないのです。むずかしい問題ですが、とりあえず改正保険の船出を見守りましょう。

それにしても、子供手当はやめて、12歳女児へのHPVワクチン無償全員接種にしてくれないでしょうか?先日来院された、当院でのサーバリックス接種1号2号になってくださったお嬢様のお母様に敬意を表しつつ、そう思います。選挙目当てのばらまき反対。子供手当反対。もっと本当に必要なことにお金を!(全然、医療経済の話ではなくなってすみません)

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